インドネシア赴任記録(バンドンより)

インドネシア バンドンに赴任。仕事や日常生活で気づいたことを織り交ぜながら赴任生活をつづっていきます。

インドネシアで働く前の心構え

★インドネシアで働く★

 突然のインドネシア勤務辞令・・・ビザ取得や引っ越し準備など、やることはたくさんあるけど、肝心の仕事は大丈夫? インドネシア人って、どんな性格なの? よく聞く宗教への配慮って? 日本との違いにも着目しながら、インドネシアで働く際の注意点、仕事のコツやポイントをまとめてみました。

 

【目次】

1.イスラム教って?

2.インドネシア人の特徴と、仕事で注意すべきポイント

3.簡単・便利なインドネシア語

   

1.イスラム教って?

 インドネシアの9割近くはイスラム教です。イスラム教を信仰するムスリムの方々には、日本とは異なる価値観、生活習慣が色々あります。

①1日5回の礼拝

 日の出前、正午、夕方、日没後、夜の5回あります。

 礼拝の時間になると、周囲のモスクから「アザーン」と呼ばれる合図が流れます。

 

 特に朝のアザーンは、毎日4時半頃になると、場所によっては大音量で響いて聞こえてきます。眠りの浅い方は、日本から耳栓を持参された方が良いかも・・・。

 

 正午のアザーンは、会社だとちょうど昼休憩の時間。食事の前か後に、ムスリムのスタッフ達が水洗い場で手足を洗っている姿を見かけることでしょう。礼拝前には、身体を清める必要があるためです。公共施設やレストラン、ショッピングモール等でも、トイレの近くにMusholla(礼拝所・モスク)」と手洗い場があります。礼拝の時間頃にトイレへ行くと、人が多くてぎょっとすることもあるかもしれません。

 

 仕事で決まった時間に礼拝ができない場合、時間をずらしたり、礼拝せずに過ごしたりする人もいます。信仰度合いは人によって様々なので、スタッフと出張に行って帰宅する時、夕方の礼拝をしないで帰る人もいれば、礼拝したいからモスクに寄ってほしいと頼むスタッフもいます。言いにくいスタッフもいると思うので、最初はこちらから「お祈りする?」と気を遣ってあげましょう。

 

 1回の礼拝時間は5分~10分程度ですが、礼拝所が混んでいると、戻ってくるのも遅くなります。

 

②ハラル食

 ムスリムは、豚肉とアルコールがNGです。食べ物をあげる際は、これらが含まれていない物を選びましょう。ゼラチンみりんも、人によっては嫌うことがあります。豚肉やお酒が入っていることがあり、食品表示だけではわからないからです。

 ただ、知らずに間違って食べてしまうこともあります。インドネシア人に、そういう時はどうするのかと聞くと、「しょうがない」(確かに)。これも信仰度合いによって個人差があるのかもしれませんが、もし間違って豚肉やアルコール入りの食べ物を渡してしまい、食べた後なら、あえて指摘せず知らぬふりをした方が良いと思います。

 

③左手の使用

 書類など、物の受け渡しは必ず右手で。買い物をする時も同様です。右手でお金を渡し、右手でおつりを受け取ります。ムスリムにとって、左手は不浄の手。どうしても左手を使う必要がある場合は、右手を添えましょう。

 

④頭は触らない

 インドネシア人にとって、頭は、神様が宿る神聖な場所。日本だと、小さな子供をかわいがる時に頭をなでることがありますが、こちらでそれをすると嫌がる人もいます。不用意に触らないようにしましょう。もちろん、大人の頭を触るのもNGです。

 

⑤ラマダン(断食)中の配慮

 ラマダンの時期は毎年ずれますが、1年に1回、この期間は、ムスリムの方々は1ヶ月間の断食に入ります。たまに勘違いされるのが、丸一日飲まず食わずなのか、ということ。実は日の出前(朝3時半~4時頃)と日没後は食事をします。

 

 ただ、断食中は水を飲むこともできません。彼らは「慣れている」と言いますが、目の前で飲食することは控えましょう。また、この期間は仕事への集中力も落ちやすくなります。仕事効率やパフォーマンスも落ちる可能性がありますので、仕事を依頼する際はほどほどに。ドライバーを長時間使用するのも、できる限り避けた方が無難です。

 

2.インドネシア人の特徴と、仕事で注意すべきポイント

 人によって性格や資質に差はあるものの、一般的にこういう人が多い、という特徴をまとめました。

①時間にルーズ

 スケジュールを決めても、予定通りにいかないことが多いです。インドネシアでは「ゴムの時間」という言葉があるほど、いくらでも時間が伸びていきます。また、遅れてもあまり焦りません。会議の開始時間前に集まるのも珍しいことです。たいていの人は、5分~10分は遅れます。お客さんの来社も、ひどい時は1時間遅刻の時もあります。

【対策】遅らせたくない大事な案件ほど、早め早めの行動を。必ず遅れると考えて、遅れた時の代案や多めの予備時間を持っておけば、いざという時に慌てなくて済みます。

 

②口を開けば言い訳が

 遅刻すれば「道が混んでいたから」。仕事が期日までに完了できなかったら「忙しかったから」・・・とにかく、失敗やできなかった時の言い訳が多いです。プライドが高いのか、怒られることを恐れてか、自分の非を認めようとしません。というより、自分に非がないと思う人もいます。

【対策】どうすれば失敗しないのか、未然防止策を考えさせ、それを実行させるようにしましょう。

 

③人前で怒られるのは苦手

 協調性を重んじプライドが高いインドネシア人は、人前で怒られるのが苦手。これは、イスラム教の教えも関係しています。もし怒られている人がいたら、周りの人は怒っている人に対して良い印象を抱きません。イスラム教では、人前で怒る人=感情を抑制できない人と考えます。

【対策】部下を指導する時は、周りに人がいないところで注意しましょう。感情的にならず、「なぜだめなのか、次からどうすれば良いのか」というアドバイス観点で話しましょう。

 

④「大丈夫」は大丈夫じゃない

 仕事を任せた時、「大丈夫?できる?」と聞くと、「Tidak apa apa(ティダ・アパ・アパ=大丈夫)」と返答されると思いますが、それは根拠のない自信。また、「こういうこと? こうなるの?」と聞くと、「Mungkin(ムンキン=たぶん)」と答えることもよくあります。彼らの希望的観測を信じると、後で痛い目を見ることに・・・。

【対策】きちんと確認しているのか、その根拠はどこから来るのか、細かくチェックしましょう。

 

⑤プライベートが大事

 仕事が立て込んでいても、平気で休んだり残業せずにさっと帰ったりします。「家庭の用事」を理由に休む人も多いです。インドネシア人は、仕事よりプライベート優先の傾向があります。日本人が仕事を優先しすぎている節もありますが、「今休まれると困る」という時にもお構いなしで休まれると、仕事が回らなくなることも・・・。

【対策】休みを拒否して仕事を強要することはできません。できたとしても、そんな会社だと逃げられます。休んでほしくない時に休まれる場合は、その人の代わりに誰が対応できるか確認し、仕事をカバーできるようにしましょう。

 

⑥上司を重視

 上司を敬う意識が強いので、上司の言うことは絶対、という傾向もみられます。遠慮して、自分の意見を言えない人も。上司の意見に従ってばかりのイエスマンになると、自主性が失われます。

【対策】日本人が上司の場合、アドバイスが指示ととられないよう、本人の意見をまず聞き出すことが大事です。

 

⑦話し合い大好き

 何かにつけて「ミーティング(会議)」を開こうとします。目的が明確になっておらず、集まってから互いに好き勝手言い合う話し合いになることもしばしば。また、会議の時間が長くなる傾向にあります。細かい指摘が多く、お互いに納得のいく落としどころを見つけようとするために、なかなか結論まで行きつかないようです。

【対策】会議の前に、議題と目的をしっかり決めておく必要があります。

 

⑧噂話はあっという間に広がる

 噂話好きでもあるので、話したことがすぐに広まる可能性が高いです。「ここだけの話」がここだけに留まらないで、気づけばほとんどの人が知っているという状況も珍しくありません。

【対策】本当に秘密にしたいことは、言わない方が無難です。どうしても話す必要がある時は、誰にも言わないことを約束させます。

 

⑨報連相しない

 途中報告がなく、事後報告が多いです。事後報告すらないこともあります。

 相談については、困ってアドバイスを求めてくる時もありますが、アドバイスを受けた後、解決すれば、その後は何も言ってきません。結果報告がないので、アドバイスした身としては「その後どうなったのか」が気になると思います。

【対策】段階的に経過報告するクセをつけさせましょう。相手が日本人ということで、報告を面倒くさがったり、話しかけるのに躊躇したりする人もいます。こちらから積極的に話しかけてコミュニケーションの機会を増やし、向こうから話すハードルを下げてあげることが大切です。また、アドバイスをした後は、「結果を後で教えて」と一言付け加えると良いかもしれません。

 

⑩指示待ち

 日本人が助け舟を出せば出す程、「困った時は日本人が何とかしてくれる」という甘えが大きくなり、何でもかんでも頼ろうとしてきます。自分で考える前に、すぐ「どうしたら良いですか」と聞いてくる時は注意。いつもこちらからアドバイスしてばかりだと、主体性がどんどん失われていきます。

【対策】相談を受けたら、まず、「あなたはどう思う? どうしたい?」と、意見を引き出すようにしてみましょう。

 

⑪忘れる

 記憶力はそんなに良くないです。メモでも取っていないと、すぐに忘れます。メモをしても、メモしたことすら忘れるかもしれません。そして平気で「忘れた」と言います。正直なのは結構ですが、忘れたことを悪びれずに言うので、こちらはイラっとするかもしれません。

【対策】大事な予定の前には、日程が近づくたびに事前確認を。頼んだ仕事がなかなか仕上がらない場合は、「どうなってる?」とフォローを。依頼する時は、明確な期日を伝えることが大事です。「なるべく早く」といった日本人の「察して」感覚は伝わりません。「何日の何時までに」とはっきり伝え、期日が近づいたら、状況確認をします。メモをする習慣だけでなく、メモを定期的に読み直す習慣もつけさせた方が良いです。

 

3.簡単・便利なインドネシア語

 実はインドネシア語は、世界で最も簡単な言語と言われています。

 英語ができない駐在員で、インドネシア語はぺらぺら話せるようになったという人もいます。簡単な理由はいくつかあると思いますが、個人的に思うのは、以下の3点。

①発音が簡単

 アルファベットをそのまま読むパターンが多いです。英語に近い単語が多いので、英語のできる人は楽かと思いきや、綴りや発音が微妙に違うケースもあり、かえって英語との違いに戸惑うかもしれません。インドネシア語を使い過ぎて、英語がとっさに出なくなった・・・という声も聞きます。

 

②日本語を思わせる単語が多い

 Kue(クエ→食え?)など、日本人にとって耳なじみの良い単語が多いです。

 ちなみにKueは、「菓子」という意味です。

 

③文法がシンプルでも伝わる

 単語の羅列でも意味が通じることが多いです。よく使う単語にはシンプルなものが多いので、短い会話で済むことも、覚えやすい理由の一つと思われます。英語のように、状況によって語尾が変わるということがなくても通じます。

 例えば、「Ini ada?(イニ アダ?=これ、ある?)」。疑問形は語尾を上げるだけでOK。「Ada kah(アダ カ?=ありますか?)」という言い方もあります。

 

 会社には、日本語や英語を話せるスタッフもいることでしょう。それでコミュニケーションがとれるなら、インドネシア語を使う機会も少ないかもしれません。ただ、日常生活の中で使うことはあるでしょうし、彼らの母語はインドネシア語。日本語や英語で会話できても、やっぱり、インドネシア語で話しかけてあげると喜びます。まずは日常会話から、少しずつインドネシア語を混ぜて話してみましょう。

 

 よく使われるインドネシア語を挙げておきます。

 

【挨拶】

 ◆Selamat pagi(スラマット パギ=おはよう)

 ◆Selamat siang(スラマット シアン=こんにちは *昼)

 ◆Selamat sore(スラマット ソレ=こんにちは *夕方)

 ◆Selamat malam(スラマット マラム=こんばんは)

  *「Selemat」をつけると丁寧な言い方。親しい人やスタッフには「Pagi(パギ)」等、つけなくてもOK。

 

【お礼】

 ◆Terima kasih(トゥリマ カシ=ありがとう)

 ◆Sama sama(サマ サマ=どういたしまして)

 

【依頼】

 ◆Minta tolong(ミンタ トロン=(私のために)お願いします)

 ◆Tolong~(トロン~=(動詞)~してください)

 ◆Minta~(ミンタ~=(名詞)~をください)

 ◆Silahkan(シラカン=(あなたのために)どうぞ(して下さい))

 

【謝罪】

 ◆Minta maaf(ミンタ マアアフ=ごめんなさい)

  *maafだけでも「ごめん」という意味になるが、Mintaがあると丁寧

 ◆Permisi(プルミシ=すみません)

  *失礼しますに近い。目の前を横切る時など

 

【褒める】

 ◆Bagus(バグース=すごい)

 ◆Baik(バイッ=良い。了解の意味もある)

 

【質問】

 ◆Apa?(アパ=何?)

 ◆Kapan?(カパン=いつ?)

 ◆Kemana?(クマナ=どこへ?)

 ◆Dari mana?(ダリ マナ=どこから?)

 ◆Siapa?(シアパ=誰?)

 ◆Bagaimana?(バガイマナ=どのように?どうすれば良い?)

 ◆Apa kabar?(アパ カバール=元気ですか?)

 ◆Boleh kah?(ボレ カ=良いですか? *許可を取る意味で)

 

【よく使う単語】

 ◆Saya(サヤ=私)

 ◆Ya(ヤー=はい *肯定)

 ◆Tidak(ティダッ=いいえ *否定)

 ◆Mau(マウ=~したい。~する)

 ◆Bisa(ビサ=できる)

 ◆Harus(ハルス=~しなければならない)

 ◆Tidak usah/perlu(ティダ ウサ またはティダ プルー=必要ない)

 ◆Perlu(プルー=必要)

 ◆Pergi(プルギ=行く)

 ◆Pulang(プーラン=帰る)

 ◆Kerja(クルジャ=働く)

 ◆Sakit(サキット=痛い。病気)

 ◆Makan(マカン=食べる)

 ◆Minum(ミヌム=飲む)

 ◆Cape(チャペ=疲れた)

 ◆Macet(マチェット=渋滞)

 ◆Cepat(チュパット=早く)

 ◆Bicara(ビチャラ=話す)

 ◆Bilang(ビラン=言う)

 ◆Tidur(ティドゥール=寝る)

 

◆まとめ◆

①イスラム教の慣習や考え方を理解しよう

②インドネシア人の特徴を知って、仕事のトラブル防止やイライラ防止を

③簡単なインドネシア語から覚えて、スタッフとの距離を縮めよう